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“4つの密約”結ばれた背景 沖縄核再配備 交渉「意義大きい」(産経新聞)

 ■若泉氏の「他策ナカリシ」追認

 日米4密約問題を調査した外務省有識者委員会の報告書は、当時の日本が置かれていた姿を浮き彫りにする役割も果たしている。報告書は3密約を認定、岡田克也外相は報告書が否定した沖縄返還決定時の核再持ち込み合意についても「密約」との認識を示した。それぞれの密約が背負っていた「現実」とは何だったのか。(肩書は当時)

                   ◇

 「若泉・キッシンジャー・ルートが果たした役割を否定することはバランスを失う。このルートを通じてニクソン氏の意向が佐藤氏に届いた意義は大きい」

 有識者委員会の報告書には、「密使」の活動が言及されている。昭和44年、沖縄返還合意の際の有事での核再持ち込みをめぐり、佐藤栄作首相とニクソン米大統領との会談準備にあたった若泉敬京都産業大教授のことだ。

 核再持ち込みに関する秘密合意を「密約」でなかったと認定した報告書も、若泉氏の役割を評価せざるを得なかった。

 会談後に出された共同声明には、米国が日本に核兵器を持ち込む場合は「事前協議」を行うと明記され、「核抜き本土並み」の沖縄返還が決まった。それを実現するため舞台裏で作られたのが合意議事録だ。日本政府は、緊急事態の際は事前協議を経て核持ち込みを容認する方針を伝えた。

 若泉氏は秘密交渉の経緯について著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」(文芸春秋)に記している。

 首脳会談直前、若泉氏はキッシンジャー大統領補佐官と秘密交渉を重ね、共同声明とは別に極秘の合意議事録を作成した。

 文案は米大統領が「重大な緊急事態が生じた際、米国政府は日本国政府と事前協議を行った上で、核兵器を沖縄に再び持ち込むことおよび沖縄を通過する権利が認められることを必要とするであろう」と述べ、日本の首相が「米国政府の必要を理解し、遅滞なくそれらの必要を満たすであろう」と答える内容。極秘を勘案し、署名はイニシャルだけにする予定だった。

 若泉氏がこれを立案したのは、共同声明の文言をめぐり米側が「事前通告」を求めたのに対し、「それでは『核抜き本土並み』にならない」と、日本の判断の余地を残す「事前協議」という形にするためだった。

 合意議事録を作成する場として、1回目の首脳会談後、ニクソン大統領が佐藤首相を大統領執務室隣の小部屋に誘い、2人だけで議事録にサインするというシナリオが描かれた。

 11月19日の1回目の首脳会談終了後、佐藤首相から若泉氏に電話が入った。

 「万事うまくいった。有難う」

 若泉氏は胸をなでおろした。

 「私の友人(キッシンジャー氏)の話のとおりでしたか」と聞くと、佐藤首相は「そのとおり。ただ一つ違っていたのはサインだ。向こうの先生がフルネームでサインしてしまったから、おれもそうしたんだ」と語った。

 サインは違ったが、若泉氏のシナリオは成功し、日本の悲願だった沖縄の返還が決まった。

 若泉氏は、合意議事録について、「核時代における生き残りを米国の『核の傘』に求めている敗戦国日本としては、万が一にも緊急不可避の非常危機事態が生起した場合、自国の生存と安全のためにもこの文書が必要となるかもしれない。それがそもそも日米安保条約の存在理由だ」と記している。

 そして「日本および日本国民の民族的要求を確実に実現するため、この一片の文書は支払わねばならない最小限の代償なのである。これなくしては、日本固有の領土沖縄とそこに住む百万同胞は『核抜き』という日本の基本的条件下で祖国に還ってくることはないのだ」としている。まさに「他策ナカリシ」だったのである。(高橋昌之)

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